ジュエリー

映画に登場した有名ジュエリーを鑑定士目線で語ってみた

映画に登場した有名ジュエリーを鑑定士目線で語ってみたジュエリー

映画に登場するジュエリーは、ただの小道具ではなく記憶に残る主役のひとつです。本物なの?実在するの?値段は?そして現実に似たものは手に入る?

GIA宝石鑑定士の視点で、あの有名ジュエリーたちをリアルに解説してみました。映画の中の輝きが、あなたの手元につながるかもしれません。

【鑑定士目線で見る】代表的な代表的な映画の中のジュエリー

①タイタニック|ハート・オブ・ザ・オーシャンと青い宝石の正体

私が宝石鑑定士として印象深いのは、『タイタニック』の「ハート・オブ・ザ・オーシャン」にまつわるご相談が急増したことです。映画公開直後、私のもとにも「映画のような青いハートのネックレスを婚約記念に贈りたい」というお客様が来店されました。

実際の映画で使われたのはキュービックジルコニア製のレプリカですが、現実に近い輝きを求める方には、私はタンザナイトをおすすめしています。

ハート・オブ・ザ・オーシャンのレプリカ

ハート・オブ・ザ・オーシャンのレプリカ

あるカップルは、深いブルーにほのかな紫が混じるタンザナイトのルースを手に取り、「この色合いが、あの名シーンを思い出させる」と感動されていました。

ブルーサファイアよりも紫がかったニュアンスが美しく、同じカラートーンでも価格帯に幅があります。しかも石に個性があり、よりロマンチックな表情を演出できると感じたからです。

タンザナイト

タンザナイト

「これはこれで、あの映画のラストシーンを思い出しますね。」と微笑まれたお客様の顔が、今でも忘れられません。

②プリティ・ウーマン|ネックレスに込められた赤と白の物語

『プリティ・ウーマン』の赤と白のネックレスは、私の仕事にも大きな影響を与えました。映画公開からしばらくして、50代の女性が「映画のような華やかさを自分にも」と来店されたことがあります。

ルビーとダイヤのネックレス

ルビーとダイヤのネックレス

その方は「派手すぎるのは苦手だけど、上品な赤と白の組み合わせに憧れる」とおっしゃっていました。私は肌の色や普段の装いに合わせて、落ち着いた色味のルビーと、控えめな輝きのダイヤを選び、オリジナルのネックレスをデザイン。

完成品をお渡しした際、「自分だけの映画のワンシーンができた気がします。」と笑顔で話してくださったのが印象的でした。

デザインしたルビーとダイヤのネックレス

デザインしたルビーとダイヤのネックレス

ルビーの価値は色味や内包物の状態など多くの要素で決まるため、じっくりと一緒に石を選ぶ過程も大切にしています。

実際にあのネックレスは、映画のために特別に制作されたもの。けれど、似たデザインは今でも王道として人気があります。

③オーシャンズ8|カルティエのトゥーサン・ネックレスは本物か?

『オーシャンズ8』で話題になったカルティエのトゥーサン・ネックレス。鑑定士として、私は一度だけ、その再現版に近いハイジュエリーを展示会で目にしたことがあります。

実物は映画のプロップとは異なり、ダイヤモンドの配置や爪の細工、立体感のある作りが圧倒的でした。

トゥーサンネックレス

トゥーサンネックレス

ジュエリー職人の方と直接話す機会があり、「宝石は衣装ではなく、一種の建築物だ」という言葉がとても印象的でした。映画の中でジュエリーが物語を引き締める存在になっているのは、現実の職人技あってこそだと実感しています。

 

映画のジュエリーに影響されるお客様の心理と選び方

私の経験上、映画を観た直後に「映画のヒロインのような雰囲気をまといたい」とご相談に来られる方はとても多いです。ただ、実際には「全く同じデザインが欲しい」というより、「あの映画の世界観を自分らしく表現したい」というご希望が多い印象です。

例えば『ティファニーで朝食を』をきっかけに、お母様の誕生日にパールネックレスを贈りたいという方がいらっしゃいました。オードリー・ヘプバーンのイメージにとらわれすぎず、ご家族の雰囲気や普段の装いに合うようにデザインをアレンジ。

「映画と同じではないけれど、母にぴったり」と喜んでいただけたことが、私にとっても嬉しい出来事でした。

パールのネックレス

パールのネックレス

私はカウンセリングの際、必ずお客様の言葉の奥にあるイメージを具体化するようにしています。

・肌色に合うか
・シーンに馴染むか
・どんな気持ちで身につけたいか

これらを丁寧に引き出していくことで、映画から始まるジュエリー選びが、その人自身の物語へと変わっていくのです。

まとめ|物語の中の宝石と、現実で選ばれるジュエリーのあいだ

映画の中でジュエリーは、物語を語る道具であり、登場人物の心を映し出す鏡でもあります。でもそれは、現実の世界でもまったく同じことが言えると私は思っています。

スクリーン越しに見たあの輝きに憧れて、いつか自分も手にしたいと願ったあの瞬間。その気持ちこそが、ジュエリーを特別なものにしてくれる第一歩なのです。

「これは映画に出てきたみたいですね。」そんな言葉をもらったジュエリーは、きっとその人にとって一生忘れられない存在になります。映画のようなジュエリーは、実際に存在します。でも、本当に価値があるのは、あなたの人生のなかで輝く一本です。

ストーリー性のあるジュエリーが好きな方はこちらも参考にしてください。

ヴィンテージジュエリーの魅力と選び方|鑑定士だけが知る本当の価値
私はGIA(米国宝石学会)認定の宝石鑑定士として、数多くのジュエリーに関わってきました。数値やランクで評価できる現代の宝石と違い、ヴィンテージジュエリーには言葉にできないような「深み」があります。過去の誰かが大切に使ってきたからこそ宿る空気...

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました