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ボーイング787が初の致命事故、なぜ防げなかった? インド機墜落から見える、空の安全に対する私たちの課題

2025年6月、インド・グジャラート州で発生した航空機の墜落事故は、世界中に大きな衝撃を与えました。

墜落したのはエア・インディア171便、使用機材はボーイング787ドリームライナー。
この事故は、商業運航開始から14年を経て、ボーイング787として初めての致命的事故となりました。

本記事では、事故の概要や考えられる原因、航空安全に関する課題について、一般論としてわかりやすく整理し、私自身の視点も交えてまとめます。

事故の概要:離陸からわずか32秒で墜落

2025年6月12日、エア・インディア171便(ボーイング787型機)がアーメダバード空港を離陸後、わずか32秒で墜落。

目的地は英国・ロンドン近郊でしたが、大学の建物に激突し、乗員乗客242人中241人が命を落としました。

機体は一度上昇したものの、高度を維持できず、そのまま緩やかに地面へ下降し、爆発炎上。この墜落は「離陸直後」という航空機にとって最もリスクの高いタイミングで発生しました。

ボーイング787はなぜ墜落したのか?考えられる3つの原因

専門家やパイロットによる現時点での分析では、以下の3つの要因が考えられています。

両エンジンの同時停止

極めて稀なケースですが、燃料供給系統の不具合や制御装置の異常などにより、両エンジンが同時に停止した可能性があります。映像からも、機体が推力を失ったような挙動が確認されています。

バードストライク(鳥との衝突)

離陸直後、鳥の群れに突入してエンジンが破損した可能性も。
アーメダバード空港周辺では鳥との衝突事故(バードストライク)が過去にも多発しており、発生件数は年々増加しています。

※バードストライクとは、飛行中の航空機が鳥と衝突し、エンジンや機体に損傷を与える事故です。

高揚力装置(フラップ)の不具合

フラップとは、離陸・着陸時に揚力を高める装置です。設定ミスや作動不良により揚力が不足し、失速した可能性も指摘されています。この場合は、人的ミスの関与もあり得ます。

唯一の生存者と、火災による被害拡大

ただ一人の生存者は、非常口付近に座っていた40歳の男性でした。「離陸直後に機体が動かなくなったように感じた」と語っており、機体が何らかの異常状態にあったことがうかがえます。

墜落時には12万5千リットルもの燃料が搭載されており、これが引火して激しい火災が発生。炎の勢いが強く、救助が極めて困難だったと伝えられています。

今後の調査と浮かび上がった3つの課題

事故後、インド航空事故調査局(AAIB)による正式な調査が開始され、米国からもボーイング社、GE(エンジン製造元)、FAA(連邦航空局)が協力しています。原因の特定には数か月を要する見通しですが、現時点で以下のような課題が浮かび上がっています。

1. 空港周辺の鳥害対策の強化
安全な離陸のために、空港環境の整備が欠かせません。

2. 離陸直後の異常事態への訓練強化
「30秒の初動」が生死を分けるケースがあるため、操縦士や管制官の即時対応力が問われます。

3. 自動化と人的チェックのバランス
最先端機材であっても、人の判断が必要な瞬間があることを忘れてはいけません。

まとめ:空の安全は「誰かが守ってくれている」ものではない

この事故を知ったとき、私は強く感じました。「航空安全」とは、機体の性能だけでなく、空港の環境整備、人的対応、そして国際的な連携すべてによって支えられているのだと。

最新鋭のボーイング787でさえ、事故のリスクから完全に逃れられるわけではありません。だからこそ、私たち一人ひとりがこの事故を“過去の出来事”として終わらせず、学びと祈りを持って受け止めていく必要があると感じました。

241人の命が失われたという重い現実を胸に、二度と同じような悲劇が起こらない未来を願って――。

文・構成:田嶋 大悟
(元週刊誌社会部記者/特集・長尺記事担当)

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