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【随時更新】エア・インディア機墜落事故のまとめ

離陸からわずか5分。日常の延長にあったはずのフライトは、260人以上の命を飲み込み、黒煙の中へと消えた。

2025年6月12日、午後1時38分。インド・アーメダバード国際空港を離陸したエア・インディアAI171便は、ロンドンへ向かう長距離便だった。搭乗者242名。乗客230人、乗務員12人。彼らの誰もが、まさかその空が“最後の空”になるとは思っていなかっただろう。

離陸からわずか数分後、機体は住宅地と医科大学の寮に墜落。現地時間でたった5分間。人間の命を奪うには、それで十分だった。

何が起きたのか――記録と証言

墜落したAI171便の機体はボーイング787-8 ドリームライナー。事故当時、機体はフラップ異常・着陸装置未格納のまま上昇を試みていた可能性が高い。離陸直後のメーデー発信。1分以内のレーダー消失。そのすべてが、危機がすでに始まっていたことを示している。

墜落現場は、BJ医科大学の学生寮および周辺の住宅街。炎上し、黒煙が空を覆い、学生や住民も巻き込まれた。

■ 目撃証言と現場の様子
機体は機首を上げたまま高度を下げ, 翼が揺れながら大学の建物に衝突して爆発。学生100人以上が食堂におり、多数が犠牲に。建物には現在も機体の残骸が突き刺さったまま。

唯一の生存者、語る

■ 生存者の証言
唯一の生存者:英国籍のビシュワシュ・クマール・ラメシュさん(40)

非常口近く「11A列」に座っていた。非常口付近から脱出したという。全身火傷と複数の骨折を負いながらも、搬送先の病院で意識を取り戻した。

「離陸30秒後、大きな音がして墜落。全てが一瞬だった」と証言。助かった理由は明確ではない。「叫び声が、機体中に響いていました。煙が回ってきて、誰がどこにいるかもわからなかった。乗務員の声は、聞こえなかった。」

6月14日時点の原因究明と身元確認の進捗

インド政府は軍・警察・航空局による合同調査委員会を設置。調査結果は3か月以内に報告予定。

回収されたブラックボックス(飛行記録装置)からの解析が進行中。

調査の焦点は以下の3点:

両翼のエンジンの状態

フラップ(高揚力装置)などの機体制御システム

人的ミスや天候の影響など

■ 身元確認と今後の課題
遺体損傷が激しく、DNA鑑定に時間がかかっている。今後は技術的要因とともに、設計上の欠陥・操縦対応の妥当性・空港の管理体制などが問われる可能性もある。

失われた命に国境はない

今回の犠牲者は、インド169人、英国53人、ポルトガル7人、カナダ1人。地上でも学生や住民を含め、24名以上が命を落としたとされている。

政治的インパクトも大きい。グジャラート州元首相ヴィジェイ・ルパニ氏が搭乗していたことも、のちに明らかとなった。けれども、私たちが本当に向き合うべきは、名前のない一人ひとりの物語だ。

家族に会いに行こうとしていた人。研修に向かう途中だった学生。
ハネムーン帰りの若い夫婦。誰の人生も、途中で断ち切られていいはずがない。

それでも運航は続くのか

ボーイング787は、2011年の運用開始以来初めて、乗客の死者を出した。
航空業界にとっては大きな分岐点である。にもかかわらず、各国の対応は分かれている。運航停止を発表した国はまだない。

なぜこの機体が飛んでいたのか?
なぜ誰も止めなかったのか?

その疑問は、時間が経てば「風化」に飲み込まれる。

だが記者として、私はそれを許さない。
「不運だった」「整備ミスだった」で済ませてはいけない。

記者のことば

私は、何十件もの事故報道を追ってきた。だがこの事故には、胸が締めつけられるような怒りがある。

私たちは、安全神話に甘えていたのではないか。
見えない“予兆”を見て見ぬふりしていたのではないか。
そして、責任の所在を曖昧にしたまま、また同じ空を飛ばせてはいないか。

犠牲者に名前があるように、責任にも名があるべきだ。

文・構成:田嶋 大悟
(元週刊誌社会部記者/特集・長尺記事担当)

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